塗料にはさまざまな種類がありますが、今回はアクリル樹脂塗料について解説します。アクリル樹脂塗料とはMMA(メタクリル酸メチル)を重合して作られたアクリル樹脂を使用している塗料です。また、アクリル塗料と言えば通じます。
アクリル樹脂塗料はアクリルの透明度や強度の高さなどの利点を生かして作られた塗料になります。しかし、住宅の塗り替えにおいて、結論を言ってしまえばこの塗料を塗り替えに使うことはありません。
逆を言ってしまえば、この塗料を使うような業者には塗り替えを依頼してはいけないと言うことになります。
なぜなら、この塗料は安く耐久性のない塗料になるからです。その耐久性は3~5年になりますので、住宅の塗り替えを「5年後と行いたい」と言う人ではない限り使ってはいけません。
その代りですが、新築などにはよく使われる塗料になります。では、そのアクリル樹脂塗料はどのような特徴があるのかを説明します。
目次
アクリル樹脂塗料の機能性
住宅の塗り替えにおいてはあまりメリットの無い塗料ですが、一般的には以下のような特徴を持っています。
・透明度が高い
・高温における変色に強い
・光沢保持性、保色性がある
・絶縁性がある
・クリア塗料は耐候性がよく、高温でも変色しない
・弾性アクリル塗料はひび割れに強く、防水性にも優れる
・耐水性、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)がある
になります。金額が安くコストパフォーマンスを考えればこのアクリル樹脂塗料と言うのは決して悪い塗料ではありません。
ただ単に耐久性がないだけなのです。耐久性がないために住宅の塗り替えには適さないだけなのです。住宅の塗り替えと言うのは一般的には10年と言われています。
ですから、5年ほどしか持たないアクリル樹脂塗料を使ってしまえば、塗り替えを5年で行わなければいけません。それでは、塗り替えを何度も行わなければいけなくなってしまいますので、経済的ではありません。
このようなことからも住宅の塗り替えには適さない塗料だと言うことがわかります。しかし、塗料としては決して悪くはない塗料になります。
アクリル塗料の種類
塗料の種類はたくさんありますが、アクリル塗料の中でもたくさんの種類があります。
アクリル塗料の種類は、
・アクリル弾性塗料
・溶剤系アクリル樹脂塗料
・反応硬化型アクリル樹脂エマルジョン塗料
・つや消しアクリル樹脂エマルジジョン塗料
・つや有りアクリル樹脂エマルジョン塗料
・アクリル系外壁吹き付け仕上げ材
・アクリルラッカー(溶剤型熱可塑性アクリル樹脂塗料)
になります。アクリル塗料だけでもこれ程種類がありますので、どの塗料がどの特徴があるのかわからないと思いますので、わかりやすく説明します。
アクリル弾性塗料について
弾性塗料と言うのは、ひび割れを防止する塗料になります。ですから、ひび割れは起こりにくい塗料になります。
また、この塗料は安く耐候性が低いです。(耐候性とは変形や変色、劣化などが起こりにくいこと)このようなことからも住宅の塗り替えには適しません。なぜなら、変色など劣化が起こりやすいからです。
溶剤系アクリル樹脂塗料について
打ち放しコンクリート生地仕上げの上塗り塗料、また内壁の抗菌、防カビ塗料としても使用されています。
他には、外壁の複層吹き付け材のトップコート、また変性アクリルとして屋根用塗料、床用塗料としても使用される塗料になります。
溶剤系アクリル樹脂塗料は、耐候性、耐水性、耐アルカリ性、耐油性に優れていますが、耐酸性は弱いです。
この塗料は外壁以外にも、鋼材 、亜鉛鍍金面、アルミにも塗装することができます。しかし、それ専用の下塗り材が必要になります。
反応硬化型アクリル樹脂エマルジョン塗料について
アクリル樹脂を水に分散させたものがアクリル樹脂エマルション塗料です。建築塗装では内壁、外壁用塗料として主にモルタル、コンクリート塗装に使用されてます。
耐候性、耐水性、耐アルカリ性に関して言えばとてもいいのですが、耐酸性はあまりなく、耐油性に関してもありません。
この塗料は水を使う塗料になり、DIYなどでも使われる塗料になりますので、扱いやすい塗料になります。
つや消しアクリル樹脂エマルジョン塗料について
基本的にはそこまで上記で説明した反応硬化型アクリル樹脂エマルジョン塗料と変わりません。この塗料は外部用もあるのですが、最近では反応硬化型が使用されています。
ですから、主に内装用として使われることが多いです。外部用に向いていない点としては、耐酸性や耐油性はありません。
そのようなことからも外部用ではなく、内装用として使われることが多い塗料になります。内装用としての主な使い道は、クロス(壁紙)用塗料として使用されます。
つや有りアクリル樹脂エマルジョン塗料について
この塗料は、つや消しのアクリル樹脂エマルジョン塗料とは名前からすれば似ているかもしれませんが、その用途には大きな違いがあります。
つや有りアクリル樹脂エマルジョン塗料は、内壁や外壁に使われます。その中でも主にモルタルやコンクリートの塗装に使われる塗料になります。
ですが、耐酸性や耐油性はありません。その点からも外壁には向かない塗料と言っても過言ではないかもしれません。
この塗料は、亜鉛メッキ面にはプライマー(下塗り)なしでも塗装できる特徴があります。そして、内装用においてクロス用塗料としても使用されます。
そのほかには、簡易性防水材のトップコート(仕上げ)としても使用され、塗り床材としても使用されます。
アクリル系外壁吹き付け仕上げ材について
外壁吹き付けの仕上げに使われる塗料になるのですが、その種類は主に3種類になります。
・単層弾性アクリルゴム系仕上げ材
・アクリル系複層吹き付け仕上げ材
・複層弾性アクリル系仕上げ材
になります。この塗料についても順番にどのようなものか簡単に説明します。
単層弾性アクリルゴム系仕上げ材
この塗料は、透湿性があります。そして、弾性のゴムのような塗料になりますので、クラックへの修復性があります。
しかし、その弾性は数年しかもちませんので、住宅の塗り替えにおいては向いていない塗料になります。そして塗装方法としては、吹き付け、ローラー仕上げ用が存在します。
アクリル系複層吹き付け仕上げ材
この塗料は、トップコートとして使用されるのですが、その際に模様をつけたい場面において使われる塗料になります。
一般的なトップコートとしては、アクリルエナメルが使用されます。低汚染型の塗料もあり、その塗料はセラミック変性アクリル樹脂塗料が使用されます。
また、環境型としては水性反応硬化型アクリル樹脂塗料が使用され、つや消しつや有りの両方の塗料が使用されます。
複層弾性アクリル系仕上げ材
この塗料は、上記の2つを足したような特徴を持っておりクラックなどの弾性が必要とされ、なおかつ模様を仕上げにしたい場合のトップコートとして使われます。
そして、水性と溶剤の2タイプがあり、どちらのタイプもこの弾性アクリル樹脂塗料が使用されます。塗装方法としては、吹き付け、ローラー仕上げ用が存在します。
アクリルラッカー(溶剤型熱可塑性アクリル樹脂塗料)について
ラッカーとは、シンナーの中でもトルエンの量が多く、強力なシンナーを使用する塗料になります。また、この塗料は幅広い分野に使用され、金属、木工、コンクリート用、プラスチック面にも塗装ができます。
なので、家電、自動車、航空機、車両など広い分野で利用される塗料になりますが、住宅の塗り替えなどの現場塗装では使用されることは少ないです。
アクリルラッカーに関しては、ホームセンターなどでラッカー塗料を見かけると思いますし、使ったことのある人も少なくはないかもしれません。ですから、多くの方が比較的知っている塗料になります。