屋根は建物の中で直射日光や雨などが最も当たる場所のため、定期的に塗り替えなどのメンテナンスを行う必要があります。
手入れを怠ってしまうと、見栄えが損なわれるのはもちろんのこと、雨漏りの原因になってしまうからです。
そのため、屋根の塗装が色褪せたり剥がれたりしているのを見つけた場合、早急に塗り直さなければいけません。
しかし、屋根材に粘土瓦(ねんどがわら:粘土を焼き上げて作られた瓦)を使用している場合、塗り替える必要がありません。
瓦自体に色が付いているからです。そのため、塗装にかかるランニングコスト(維持費)は発生しません。
ただし、汚れたり割れたりしてしまうことがあるため、掃除や取り換えなどの最低限のメンテナンスは欠かせません。
逆に言えば、手入れさえ怠らなければ半永久的に瓦屋根特有の風格のある見栄えを持ち続けることができます。
では、なぜ粘土瓦はほとんど手入れが不必要なのでしょうか。実は、その秘密は製造方法にあります。
粘土瓦の種類:釉薬瓦と無釉薬瓦
粘土瓦は、大きく分けて2つの種類が存在します。それは、「釉薬瓦(ゆうやくがわら)」と「無釉薬瓦(むゆうやくがわら)」です。
これらは釉薬(ゆうやく・うわぐすり:表面に光沢を出し、液体のしみ込むのを防ぐガラス質の材料)と呼ばれる薬品が塗られているかどうかの差です。
釉薬瓦の特徴
釉薬瓦は、表面を釉薬(うわぐすり、またはゆうやく:表面に光沢を出し、液体のしみ込むのを防ぐガラス質の材料)が塗られているものです。
そのため、水を良くはじきます。また、釉薬瓦にはJ型やF形、S形など、瓦の一枚一枚が英語の形状をしていて凸凹を組み合わせながら並べられています。
さらに、多くの色があるため、和風または洋風住宅のどちらの様式にも応用できます。
ちなみに、この釉薬は茶わんや湯飲みなどの陶器(とうき)に塗られているのをよく目にします。そのため、「陶器瓦(とうきがわら)」とも呼ばれています。
釉薬のコーティングが雨や紫外線から瓦を守ってくれるため、塗り替えを行わなくて良いのです。
無釉薬瓦の特徴
一方、無釉薬瓦は文字通り釉薬を塗っていない瓦のことです。
この瓦には多くの種類があり、いぶし瓦や素焼き瓦、錬込瓦(ようへん:焼き具合のみで色調すること)瓦などがあります。
この中で、いぶし瓦と府焼き瓦が無釉薬瓦の代表です。
これら無釉薬瓦は、先ほど紹介した釉薬瓦と違い、何も塗布せずに焼き上げます。そのため、釉薬瓦のように撥水性はありません。
ただし、水が浸透するわけではないので、屋根の材料として申し分ありません。これは、粘土瓦を焼き上げる際、防水性と耐久性を高めているのです。
実際に、古くから残っているお寺やお城に無釉薬瓦が採用されていることを考えればその丈夫さがわかります。
ただし、冒頭で述べた通り、釉薬・無釉薬瓦はどちらも汚れたり割れてりしてしまうことがあります。いつまでも見栄えのある外観を保つために、掃除や取り換えなどの最低限のメンテナンスは欠かさずに行いましょう。