銅は高い耐久性があることから、家の屋根材として使用されることがあります。これを、銅板(どうばん:銅の板)と呼びます。
ただ、銅は丈夫ではあるものの、金属なので酸化します。すると、表面に緑青(ろくしょう)と呼ばれる錆が発生します。
ただし、これは鉄を腐らせるものではなく、緑青は銅板を覆うことによって、腐食しづらくしているのです。これが銅板が長持ちする理由です。
しかし、耐久性に優れている銅の屋根であったとしても、酸性雨や環境汚染による雨の影響を受けてしまうことがあります。
例えば、酸性の雨が集中的に当たる場所は、徐々に銅板の厚みが薄くなり、最悪の場合穴が空いてしまう可能性があります。
また、都心部のように大気汚染が深刻な場所の場合、光化学スモッグ(化学物質による周囲の見通しがわるくなる大気汚染)が雨に溶け込んで降り注ぎ、屋根を変色させてしまいます。
ただし、これらは銅板を設置する際にきちんと設計してあればそれほど心配いりません。
日本でする酸性雨の影響
実は、日本で降る酸性雨の濃度は、銅に穴をあけてしまうほど高くはありません。
実際、国際標準化機構腐食分科会(電気分野を除く工業分野の国際規格を策定する組織の酸性雨の影響を調べる課)が行った消耗調査では、「国内で酸性雨の雨が一番強く降る東京都であっても、銅板に直接的な害を与えることはない」と発表しています。
しかし、前述の通り、ゲリラ豪雨や集中型の雨が降る場合では、耐久性の高い銅板であっても徐々に薄くなります。すると、雨水によって厚みが無くなった部分は雨が空いてしまいます。
ただし、酸性雨の影響によって銅板が薄くなる量はどれだけ多くても年0.0033mm程度のみです。
一般的な銅板の厚みは約0.35mm~0.4mmであるため、100年以上の耐久性があることになります。
このことから分かるように、酸性雨の雨のみで銅の屋根に穴が空くことはほとんどありません。
しかし、雨樋(あまどい:屋根の水が滴らないように受け止めて排出するもの)のように雨水が集中して流れる場所は厚みが薄くなり、穴が空きやすくなります。
そのため、水の流量が多い箇所の銅板は分厚くしておくと良いです。
ただし、銅は使用する量が多くなるほど、価格が高くなります。屋根全体の銅板を厚くしてしまうと膨大な費用がかかってしまうため、必要な部分のみにお金をかけるようにしましょう。
大気汚染が銅板に与える影響
大気汚染の影響は、酸性雨だけではありません。
例えば、光化学スモッグなどの人体に影響を与える化学物質が雨に溶けて降ります。
これが銅板にあたると、黒く変色してしまうことがあります。
ただし、銅板自体が変色しているのではなく、表面のみが汚れの膜をはっているだけです。
また、これはとても薄いため、約3~6か月後には雨で洗い流されて元通りの正常な色になります。そのため、突然銅板の色が黒ずんだとしても、そのままにしておいても問題ありません。
ただ、リフォームを行って瓦だった屋根を銅板にする場合、水がスムーズに流れないケースがあります。すると、雨水がたまりやすくなり、汚れや雨漏りの原因になります。
そのため、屋根材に銅板を採用する際、水たまりにあんらないように適切な水勾配(みずこうばい:水が流れる傾斜)が必要です。
銅の屋根にしたいのであれば、大気汚染の心配をするのではなく、構造上の問題が発生しないようにしましょう。