和風住宅の屋根に、銅板(どうばん)と呼ばれるものを採用しているお宅があります。
銅板は軽い上に屋根一面を銅の板で覆うため、和風瓦やスレート屋根(スレート:粘土板岩を薄く加工した屋根材)に比べると地震に強いです。
実際に、大地震で瓦屋根がズレたり落下したりするのに対して、銅板を採用している建物はほとんど損傷しません。
そのため、一般住宅に限らず、お寺や神社でも銅板を採用している場所はたくさんあります。また、銅板はいろいろな形状に加工できるため、さまざまな家の屋根の形に応用できます。
ただ、一般的な屋根材に比べると、材料代や施工費用が高いです。薄い銅の板を、職人の手によって一枚ずつ加工していくからです。また、金属の値上がりと共に銅板も高価になるため、十分な予算がなければ設置できません。
ただし、銅板は今でも人気がある屋根材です。その理由は単純であり、年月の経過と共に見栄えのある外観にかわっていくからです。
銅板の特徴
前述の通り、銅板は一般的な屋根材に比べると費用は高額です。しかし、銅板は一度設置してしまえばランニングコスト(維持費)はほとんどかかりません。
つまり、銅板を設置する初期費用は高額になるとしても、長期的に考えればお得ということです。
他の屋根材を採用して維持費がかかり続けることを考慮すれば、それほど高い買い物ではないことに気づきます。
このとき、「銅板は金属でできているため、錆びてしまうからメンテナンスが必要なのでは?」と考える人は多いです。
しかし、10円が錆にくいように、銅板も腐食しづらいです。とはいっても、酸性雨や空気に触れることで、銅板は施工直後の輝きが無くなり緑に変色します。
銅板の魅力緑青(ろくしょう)
銅板を使用した屋根は、右の写真のように施工直後は輝きを放ち、瓦屋根とはことなる風格を演出することができます。
ただ、この金属特有の光沢は、年月とともに雨や空気に含まれている塩分や二酸化炭素によって緑に近い色に変色していきます。しかし、これが銅板の魅力であり、風情あるたたずまいを演出するカギになります。
実際、古い銅板の住宅に目を向けると、キラキラした金属の色ではなく、緑色になっていることに気づきます。ただ、銅板に関心がない人から見ると、単純に銅が錆ているように思えるかもしれません。
しかし、これが銅板の良さであり、他の屋根材では演出できない味になります。これを「緑青(ろくしょう)」と呼びます。
この現象は、銅が雨や酸素に触れることで、酸素や二酸化炭素、水分、塩分などと反応して表面上に青緑色の物質の膜を張った状態です。
そのため、緑青は自然に発生するものであり、意図的に手を加えるのではありません。また、緑青が表れるのは銅板だけではなく、銅で出来ているもの全てに必ず現れます。
例えば、鎌倉の大仏やアメリカの自由の女神が代表的です。その他の銅像であっても、緑青の自然な色を美術的に取り入れています。
ちなみに、「施工直後の銅板の輝きが嫌なので、早く緑青にしたい」と考える場合、専用の薬品を使用すると良いです。これはホームセンターなどで売られているため、それを使用しましょう。
もし、和風住宅の屋根材に悩んでいるのであれば、メンテナンスメンテナンスをしなくても見栄えが良くなっていく銅板を検討してみてはいかがでしょうか。